ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
「一分で終わらせる。疲れたろ、ここはいいからもう帰れ」



「でも……」




 一条が奈央の手からナイフを奪うと無言で厳しく目を細めた。



 同じことを何度も言わせるな、と解釈すると、奈央はそれ以上なにも言えなくなってしまった。



 目にも止まらぬ洗練された動きでじゃがいもの皮がミリ単位で向かれていく、ヒールを使って素早く芽ををくり抜く。



「……お前、そんなところにつっ立って何してんだ?」




「な、何って……」



「ふん……今すぐここで襲って欲しいって顔してるぞ」




 一条の冗談交じりの言葉に奈央は息を飲んだ。




「そうだって言ったら……どうしますか?」



「……」



 一瞬一条の手が止まって、また動き出すと百個近くあったじゃがいもがいつの間にか全て剥き終わって、最後の一つが水を張ったコンテナに投げ込まれた。




「冗談を冗談で言い返すなんて、お前も言うようになったな、送ってってやるから着替えろ」



「……はい」



 なんであんなことを言ってしまったのだろうかと自分の発言を後悔した。


 それでも一条に触れられたかったという気持ちは嘘ではなかった。


 身体の中で燻っている熱を足で揉み消すように奈央は首をふった。

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