ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 タイヤがアスファルトを滑る音しかしない。


 一般道でも十分道は空いてるはずなのに一条はわざわざ高速道路を使う。



『やっぱり、気まずいのかな……』



 沈黙しすぎるとよからぬ考えばかりが浮かんでくる。



「……あの」



「……あのさ」



 沈黙に耐え兼ねて奈央が口火を切ろうとした時だった。


 一条もまた同じように何かを言いかけた。



「お、お先に……どうぞ」


「……いいよ、お前から言え」



 とにかくここ数日の自分の態度について一言奈央は謝っておきたいと思っていた。


 けれど、いざとなるとうまく言葉が紡げない。


 奈央が言い澱んでいても、一条は何も言わずハンドルを握っている。


< 89 / 326 >

この作品をシェア

pagetop