ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
「ごめんなさい……」
やっと口から出た言葉は主語もなく、いきなり聞いた一条にとっては意味不明なものだろう。
奈央は頭の中を整理しながら、何故自分が謝らなくてはいけないのか事の経緯を遡る。
「その、この前私、どうかしてて……いきなりバーから飛び出したりして……」
「……」
何故バーから飛び出したのかその理由は明白だ。
「オニオンスープのレシピを勝手に生徒に教えたことを怒ってるのか? それとも俺の財布の中に生徒の名刺が入ってたことを怒ってたのか?」
「……両方です」
「ぷっ……正直なやつだな」
意を決して奈央が薄情すると、一条は耐え兼ねたように吹き出した。
「いや、なんかお前がそんなこと言うなんてな……あの時は奈央が何考えてるか訳がわかんなくてさ、俺も焦ってたっていうか……つい、きつい言葉で傷つけるようなこと言って悪かったって思ってるよ」
どうしてこうこの人はいつもスマートなんだろう。
奈央は彼の許容範囲の広さに己の狭量さを思い知った。
「女のヤキモチほど可愛いものはない」
「や、ヤキモチ!?」