ヴｧﾙｷｭﾘｱ ｲﾝ ｷｯﾁﾝⅡeternal
　奈央はシェフコートに身を包み、髪の毛をキリッと結い上げると鏡の中の自分を見た。



『今日も一日何があっても頑張る！』




　両頬をペシペシと軽く叩くと、昨日一条が別れ際に言っていたように、ホテルの彼の部屋の前まで来て四回ノックをする。


　奈央が来た時の合図は四回と決まっていた。




「一条さん？　おはようございます」



　返事はない、もしかしたらまだ寝ているのかもしれないと思ったが奈央はカードキーでおずおずとドアを開けて中に入った。




　カーテンを締め切った薄暗い部屋は、しんと静まり返っている。



　そして部屋のどこかで規則正しい寝息が聞こえた。




　ソファの上で雑誌「yummy」を顔にかぶせながら一条が熟睡しているのが見えた。





『あ、今月号のyummy、まだ買ってなかったな』




　奈央がそっと雑誌を手に取ってちょうど見開いていたページを見てみる。



「あ……」



　二ページに渡ってクッキングスクール・フランセルについて記事が書かれていた。


　そこには神崎紗矢子がにこやかに笑ってスクール生徒代表として感想を述べている記事がピックアップされていた。



　友人から教えてもらって始めたこと、一条の教え方が上手で苦手だった料理が克服でた等、クッキングスクールの感想としては模範解答だった。










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