Dearest
街に出るとアキは、あの路地へとやってきた。


明るいうちはただの路地だが、アキはあの時の恐怖を少し感じていた。



「…大丈夫…大丈夫…」



アキは小さく震える自分に言い聞かせていた。





何時間か経つと、辺りは暗さを増してきた。



「…ここで会えたからって、またここで会えるとは限らないか。…それにあの人はあの時の事なんかもう忘れてるよね。８ヶ月も前のことだもん…」



アキは溜め息をつくと、その場から立ち去ろうとした。

その時だった。



ポンッと肩を叩かれアキが後ろを振り向くと、体格のいい男が立っていた。


するとその男は、英語を話しながらアキの腰に腕を絡めてくる。



「…えっ？何!?また!?」



アキは男を押し退けようとするが、体の大きいその男にはビクともしない。




「やだっ…何なのよもう…」



アキはバシバシとその男を叩きながら叫んでいた。



しかし、もうすでに暗くなり、人気もなくなってしまった路地にその叫びは意味がなかった。




「…ああ、あの人はあの日たまたま通りかかっただけで、二度も同じ人が助けてくれるなんてそんなドラマみたいな事起きるわけないよね。あたし…バカみたい…」



そう思ったアキが抵抗を止めた瞬間、アキに絡みついていた男が吹っ飛んだ。



「…え？な…に」


前を見ると、先程の男は壁にぶつかりうずくまっている。



アキが後ろを振り向くと、想い描いていた姿が視界に入った。
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