Dearest
「あっ!ラヴの傘持って来るの忘れた!!」

「は!?お前来た意味ねぇじゃん」

「大丈夫ですよ、アキの傘に入れて下されば」

「初めての相合い傘が出来るね」



アキはラヴに微笑むと、傘をさした。


その時、いきなり吹いた突風にアキの傘は飛ばされてしまった。




「あーっ!!傘が!!」

「なんだこのありきたりな展開は!!」



子ども達は飛んでいった傘を呆然と見送った。




「どうしよう、傘無くなっちゃった…」


焦るアキをラヴは自分のコートの右側に入れた。


大きいラヴのコートにすっぽり納まるアキ。




「…これでアキは濡れませんね。さぁ帰りましょう」

「でもラヴが濡れちゃうよ。風邪引いたらどうするの?」

「アキが温かいから大丈夫ですよ。私はアキの傘で構いません」



コートの中から顔を覗かせるアキに優しく微笑むと、ラヴはアキの背中を押して歩き出す。



2人の後ろを3色のレインコートがついて歩く。




ラヴのぬくもりと匂いがするコートの中でアキは幸せに包まれていた。



チラッとラヴを見上げると、髪を濡らしながら前を見ているラヴの綺麗な顔が見えた。





少しずつ止み始める雨。


アキは雨が止まないように祈りながら歩いていた。
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