Dearest
「サミュエルちょっと番組変えていい？」

「はい。お母さんならいいですよ」



サミュエルにリモコンを貸して貰ったアキはチャンネルを変えた。


テレビには地方のお寺が映り、除夜の鐘がつかれている様子が放送されている。




すると外から小さく鐘の音が聞こえてきた。




「鐘の音が聞こえますね。日本は心が安らぐいい文化があります」

「そうか？何かしんみりして寂しくね？」

「えー!?俺には聞こえないよ？」



レオンは窓を開けると耳を澄ます。


冬の寒い空気がリビングに入ってきた。




「寒い！レオン窓閉めてよっ!!」

「だって鐘の音聞こえないんだもん！」

「バカには聞こえねぇんだよ」



怒られてもバカにされても窓を閉めようとしないレオンをアシュリーは手招きした。




「レオン、ちょっと来い」

「何、何!?」



レオンがアシュリーに駆け寄ると、アシュリーは立ち上がりレオンの頭を殴った。

リビングに鈍い音が響く。



「どうだ。鐘の音聞こえただろ」

「痛―！アシュリーのバカぁ!!」



１年の最後の最後まで騒がしい子ども達。
< 148 / 596 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop