Dearest
帰国する日。

母は5人を空港まで見送りに来ていた。



「お母さん、また来るね」


アキは母に告げる。




「はい、いつでもいらっしゃい。待ってるから」



母はアキの肩を叩く。




「先生、またね♪」

「またお邪魔します」



レオンとサミュエルは母に手を振る。




「もうあなた達の家はここじゃないのね。何だか寂しいわ」



母がそう言うと、子ども達は声を揃えて呟く。




「俺達の家は日本のあの家だよ、先生」


アキはその言葉に泣きそうになった。




「先生、お体に気をつけてくださいね」

「ラヴもお仕事頑張って。いつもテレビ楽しみにしてるから。…それと、寂しがり屋なアキを宜しくね」

「はい、任せてください」



ラヴは頭を下げる。




「また遊びに来る時も必ず、5人で来るのよ」



母の言葉に子ども達は大きく頷く。




「…アキ、大丈夫よ。いつかあの子達が出て行っても、あなた達は絆で繋がってる。会いたい時はすぐ会えるのよ。こうしてアキが私に会いに来てくれるように、あの子達も会いに来てくれるから。だから笑ってなさい」



母はアキの頭を撫でる。




「…うん!もう大丈夫」

「あなたにはラヴがいる。ラヴはアキから離れていかないわよ。ずっとね」



アキは母に笑顔を向けると、ラヴ達の元へ向かった。



母はアキ達が見えなくなるまで5人を見送った。





「かけがえのない絆が出来てよかったわね、アキ」



母は見えなくなったアキに呟いた。



母は自分たち夫婦がアキ達姉弟を日本に残したままイギリスで働き、我が子達に寂しい想いをさせていた事を後悔していた。


だから、アキに強い絆で結ばれた家族が出来た事を誰よりも嬉しく思っていたのだった。
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