Dearest
母はラヴに秘めていた真実を話し始めた。


ラヴの記憶の片隅にある光景が浮かぶ。








それは41年前。

1人の男の子がこの世に生を受けた。


喜ばしい出来事だ。



しかし、その生まれて間もない赤子を抱きかかえた母親は涙を流していた。



長い髪を靡かせ、灰色の綺麗な瞳をしたその女は重い足を引きずり海へと歩いた。




母親は安らかに眠る赤子を浜辺の一角にそっと置いた。



海風が吹き渡り、波音が聞こえる浜辺。


静かなその浜辺には嗚咽が響いていた。




「ごめんなさい…ごめんなさい」



赤子の隣で手をつき、泣きじゃくる母親。




「…幸せになって……愛される子になって……」



暫く泣いていた母親は赤子から離れ、歩き出す。



遠くで赤子の泣き叫ぶ声が聞こえたが、その母親が振り返る事はなかった。





「…あら、また捨て子かしら」



浜辺を散歩していた妊婦が赤子の叫びに気付き、駆け寄った。




「まぁ、可愛い顔して。大丈夫よ。あなたは1人じゃないわ。…家に帰りましょう」



妊婦に抱えられた赤子はすぐに泣き止んだ。



赤子を連れた妊婦は白い建物へとやってきた。
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