恋愛短編集
「そ、そうですよね……」

穂佑実は、ギュッとペットボトルを握る。

「冗談だよ~!弥一は昔から一途な奴だから、絶対に大丈夫。一途でなければ、若頭なんてできないし?俺や哉弥(かなや)は絶対に無理だったし。親父さんもそれを見抜いていたから、弥一が影の道を歩むならって若頭の座を与えた訳だし」

「そう、なんですか……」

「だからさ、穂佑実ちゃんが許嫁ちゃんで良かったよ。穂佑実ちゃんが許嫁でなかったら、弥一は許嫁だっただろう子を断っただろうし……」

穂佑実は再び、ペットボトルを口元に運ぶ。

「部下の話だと、仕事が関わらない所だと、一に穂佑実ちゃんらしいね~。出張を早々に切り上げたいっていつも言ってるみたいだし」

穂佑実は苦笑をしながら、窓の外に視線を向けた。

「だからといって、穂佑実ちゃんはできる限り、自由にしていいし、権利はあるから。今だって、通信大学でしょ?弥一がいるから」

「いえ、大学のキャンパスは勉強が集中できないので、通信にしているだけで。本当に聞きたい授業は、きちんと許可をもらって聞きに行ってます」

穂佑実自身、語学力がある。故に、通信大学よりも直接の方が良いのだろうが、大学だけではなく、語学教室にも週に何回か通っている。
< 12 / 28 >

この作品をシェア

pagetop