恋愛短編集
「あのね、もうひとつお願いがあるの……」

わたしは背筋にゾクリとイヤな汗をかく。

「何でしょうか」

「あのね、衣装はこっちで用意するから……麻幸さんにもコスプレ、してほしいなぁって。せっかくスタイルが良いのに、勿体ないし……」

いえ、全く勿体なくはないので……。しかし、同日は一緒に行動しなければならない。変に私服だと目立つ。私が目立つ事は、避けたい。

「……分かりました。できるだけ目立たない、露出の避けた格好でお願いします」

姫佳さまは、ニッコリと笑う。旦那さまはこの笑顔が大好きでいらっしゃいますが、私にはそんな風にとらえる事ができません。


話は決まり、わたしは必要な事を手配し始める。

当日に立ち寄る場所の大体な道順と、どこに死角があるなどを調べておき、穂佑実さまの護衛に知らせておく。

もっとも、今回は内容が内容なだけに、穂佑実さまのご主人にはくれぐれも秘密事項と言うことで、進めていくのだか……。

電話先では、大きな笑い声が響く。
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