恋愛短編集
葉大さんの言う事はもっともな事だ。

実際に仕事をやってはいる。

でも、それだけではない。

「そうですね。つい」

葉大さんは、唸った。

「前に言ったと思うけど、仕事をすることは悪くないよ?ただね、ワーカーホリックにはなって欲しくない。仕事よりも大切な事があるからね?」

葉大さんは、優しく私の頭を撫でる。

確かに葉大さんが側にいてくれるなら、ワーカーホリックになんて、なる必要はない。

ただ、聞いてしまったから。

葉大さんには婚約者がいると。

いずれ、私は葉大さんの側から離れなければならない。

だとしたら、今の内から次の就職先も探しておかなければならない。

でも……。

葉大さんから離れる事を考える度に、ズキンズキンと胸が痛む。

「麻幸?どうしたの?」

葉大さんは、心配そうに眉をひそめる。

「前から言おうと思ってたけど、麻幸、何か隠してる事があるんじゃない?俺に聞きたい事があるとか?」

「そ、それは……」

私は言葉を詰まらせた。

どうやって言ったら良いのだろうか。

「麻幸は、あまり自分から言わないから。無理とか、我慢とか平気でするし。だから余計に仕事とかさせたくないんだ……」

葉大さんは、わたしの肩をそっと抱き寄せる。

< 22 / 28 >

この作品をシェア

pagetop