恋愛短編集
葉大さんの柔らかな香りが、私の心を震わせた。

「そんなこと、ないです……私の、ただのワガママだから……」

「ワガママ?麻幸のワガママなら、何だって聞くよ?」

私は思わず、葉大さんの顔を見上げた。

真剣な瞳が、私を見つめる。

私は、ほんの少し、息をこぼす。

「絶対に離れないで下さい……私が要らなくなっても」

葉大さんは不敵に、自信以外の表情を現さなかった。

私の肩を抱き締め、耳のそばではっきり言葉にした。

「離すわけない。俺は麻幸以外、何も要らない、望まない」

「で、も……」

「でも?」

「婚約者が……いるって……」

私は簡単に葉大さんへ説明をした。

葉大さんは瞬きをして、クスクスと笑う。

「婚約者、ね。それは話に続きがあるんだ。……お正月は俺達にとって、とても大切な日があるの、忘れてない?」

私は瞬きをすると、頬を赤く染めた。

「初めて会った日……」

「そう。詳しくはその日に分かるよ。第一、俺が麻幸以外の女、こうやって大切にしないのはよく知ってるはずたけどなぁ?」

葉大さんは、私の頬に軽く唇を寄せた。

「それはそうですけど……」

「まだまだ、教え方が足りないのかな?」

葉大さんはそう言って笑う。

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