恋愛短編集
でも、その笑顔は何かを企んでいるように思えてならない。

しばらくして、目的地のおでんやさんに着くと、いつものように個室。

すぐに熱々のおでんが鍋に入って、やってきた。

「さて、麻幸。何を食べたい?」

葉大さんは光の下で見ると、本当に美しい。

真っ直ぐな黒い髪に、深い黒い瞳。白い肌は、透き通って見える。

「えっと、糸こんにゃくとちくわぶ。それから、がんもどきを」

「分かった」

葉大さんが盛っていると、熱燗が運ばれてきた。

「じゃ、乾杯」

お猪口を交わして、笑顔を向ける葉大さん。

とても素敵すぎる。

「美味しいですね」

「うん。こうやって、寒い時に麻幸とおでんなんて、夢見てるみたいだ」

葉大さんは、お猪口を傾ける。

「ああそうだ、大晦日」

私は、がんもどきを落としそうになる。

「は、はい」

「仕事、邑理に確認してみる。年末年始くらいは、麻幸を解放しろって」

私は苦笑するしかない。

果たして、大晦日はどうなってしまうのか?

でも、私は葉大さんがきちんと将来を考えていたみたいで、ホッとした。



END
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