Fragile~思い出に変わるまで〜
「ひどいですよ、課長!」


そう言いながらバシバシ叩いていた桜井が、急に真面目な顔になる。


「だーかーら!

浮気なんかして、そんな可愛い奥さん泣かせたりしたら、許さないですからね?」


前にも聞いたそのセリフが今度は冗談ではなくリアルに聞こえる。


桜井の目は真剣で、こないだのことを牽制してるんだろう。


まったく、お節介なやつ……


「わかってる、大丈夫だ」


心配してくれる桜井を安心させるように、俺はそう言った。


「ならいいですけどね?
まぁ、課長がそんなことしたら、俺にチャンスが回ってくるだけですけど」


ニヤッと笑って冗談ぽく言った桜井は、あながち嘘でもないんだろう気持ちを吐露する。


「そんなことにはならないから、残念だったな?」


俺も冗談でそう返しながら、さっきの桜井の言葉を胸に刻んで、自分で自分を戒めた。


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