Fragile~思い出に変わるまで〜
さとみは俺の顔を見る事なく、アイロンをかけていた手を一瞬止めただけだった。


静かにそれだけ答えると、またワイシャツのシワを伸ばしにかかる。


いつものさとみらしくないなと感じながらも、せっかく何も言ってこないのに、自ら地雷を踏む必要もないか……と、俺はそれ以上触れないことにした。


けれどそれ以外はいつも通りの態度で接してくるさとみに、逆に違和感を覚える。


表面上は穏やかに見える雰囲気も、どこか空々しい感じがするのはなぜだろう……?


自分が後ろめたいからなのか、さとみがいつもと違うのか……


わからないまま、今日を迎えることになる。


さとみはまだ起きては来ない。


いつも日曜日は自分の方が先に起きるのが当たり前だから、変わりない光景のはずだった。


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