Fragile~思い出に変わるまで〜
そう言いながら、子供用の小さな椅子のようなものを見せる。


そんなルールがあること自体知らなかった俺は、面食らったものの、わかったと頷いて車を降りた。


取り付けが終わり、娘を座らせる段階になって初めて藤森が紹介する。


「うちの娘のひな
よろしくね?

ひなー、このお兄ちゃんが、動物園に連れてってくれる、たけるくんだよ」


ちょこんと立っている、ひなと呼ばれたその女の子は、不思議そうな顔で俺を見る。


お兄ちゃんて歳でもないだろと少し気恥ずかったけれど、悪い気はしなかった。


「はじめまして、ひなちゃん

今日はよろしくね?」


小さい子に、なんて話しかけていいか分からなくて、とりあえずそれだけをなるべく優しくにこやかに伝える。


「たける…くん?」


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