Fragile~思い出に変わるまで〜
今から行けば、お昼の休憩時間に間に合うかもしれない。
まだ11時前を指す時計の針を眺めながら、私はそう思った。
病院を出ると、私の足は自然とそのまま健の会社の方に向いていた。
さっきの女医さんの言葉を思い出す。
『おめでとうございます、3ヶ月ですよ?
吐き気はつわりでしょう
ずいぶん痩せちゃったみたいだけど、赤ちゃんのために、少しづつ回数を分けて食べるようにしてみてね?』
――3ヶ月……赤ちゃん?
先生の言葉が頭の中をグルグル回る。
念願だった健の赤ちゃんがここにいるんだと思ったら、不思議な気持ちになった。
私……妊娠したんだ……
本来なら喜んで健に知らせるべきだ。
もしかしたら、これがきっかけで気持ちが戻ってくれるかもしれない。