Fragile~思い出に変わるまで〜
昼に藤森に会ったときの感情を、さとみに気づかれたくないという気持ちも少しはあった。


ずるいな……俺も……


ギリギリのところで、自分は人助けをしているのであって、決して浮気ではないという思いが、自分の背中を押していた。


ガチャ……


鍵を開けて玄関に入ると、食欲をそそる美味しそうな匂いがしてくる。


リビングのドアを開けるとさとみがにこやかに迎えてくれた。


「おかえりなさい」


最近にはない元気なさとみに面食らいながら、さっきまでの思いを隠して平静を装おった。


「ただいま

なんかごちそうだな?
いいことでもあった?」


エビのシュリンプを皿に盛っていたさとみは嬉しそうに答える。


「まあね?っていうか最近手抜きだったから、たまにはちゃんと作ろうと思っただけよ」


< 217 / 589 >

この作品をシェア

pagetop