Fragile~思い出に変わるまで〜
さとみから藤森に関する質問をされたのは初めてだった。


やっぱり今日のさとみは少しおかしい。


そう思いながら、もう一度さとみの顔を見る。


さとみも俺の目を真っ直ぐに見つめていた。


「そっか、うまくいくといいね?

藤森さん達が早く安心して暮らせるように……ねっ?

そう思うと健、かなり重要な役なんだから、がんばってね」


いつものさとみとは違う、強い意志のようなものを宿した目で、そして、しっかりとした口調で……


俺にそう伝えてくる。


そんなさとみにうろたえながら、そうだな……とだけ口に出すのが精一杯だった。


何がさとみを変えたんだろう?


急な妻の変化についていけずに、おろおろしている自分を情けなく感じる。


心労で痩せてしまった妻も……


藤森の件をがんばれと言ってくる妻も……


同じ妻であることは変わりないのに……


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