Fragile～思い出に変わるまで〜

そう言って、鼻をすすりながら俺を見上げた藤森の目からは涙が溢れそうになっていた。


俺は何も言えずに、彼女の目を見つめ返すことしかできない。


藤森の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。


そしてその涙を拭う事なく藤森は俺に言った。


「最後にひとつだけ私のお願い聞いてくれる？

そしたら……

私、諦められるから……

お願い」


声を震わせて勇気を振り絞るようにそう言った彼女に、俺は頷くことしかできなかった。


「わかった、いいよ？

最後のお願いって……何？」


藤森は泣きながら今度は両手で俺の手をギュッと握ってくる。


そして俺の目を切なそうに見上げながら震える唇をそっと開いた。


「……キス……して？」


「――っ！」


何を言ってるんだ？


そんなこと出来るわけがない。