Fragile~思い出に変わるまで〜
藤森さんがどういうつもりで家庭を持ってる健にそんな電話をかけてくるのか、私には理解できなかった。


健は親切で恋人役をかって出ただけなのに、なんでそんなに図々しいことが出来るんだろう?


対面式のキッチンはお気に入りだったけれど、こういうとき顔を隠せないのは辛い。


自分の顔が醜く歪んでいくのがわかるから、余計に見せたくなかった。


健は少しの間、こちらを見つめていたけれど、ふいに私から目をそらして言った。


「行っても……いいかな?」


それは私に答えを委ねてる訳じゃない。


もう決まってることを、私に了承して欲しいだけ。


藤森さんにはもちろんだけど、私は健にも苛立っていた。


どうしてそんな残酷なことが言えるんだろう?


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