Fragile~思い出に変わるまで〜
瞬間……涙がこぼれ落ちる。


な…んで……?


なんで他人の子供のために健がかけつけなくちゃいけないの?


そんな思いで胸の中はぐちゃぐちゃだった。


嫌だ!行ってほしくない。


健の奥さんは私で、藤森さんじゃない。


これじゃあまるで、私の方が愛人みたいだ。


「行かないで……」


気づいたら、そう口にしてた。


泣きながら、彼の胸にすがるように抱き着く。


「行かないで!」


今度は強い口調で、もう一度念を押すように叫ぶ。


健は何も言わなかった。


黙ったまま、時間が流れていく。


健は私を抱きとめながら、ただ優しく背中をさすっていた。


今まで、こんな風に気持ちをぶつけたことなんかない。


いつでも健の気持ちを優先して納得したふりをしてた。


だから、今日くらいはいいでしょう?


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