Fragile~思い出に変わるまで〜
藤森の家に向かいながら、俺は少なからず動揺していた。
藤森から電話があったこと。
ひなの具合が悪くて藤森がパニクっていたこと。
そして……
珍しくさとみが感情的になってたこと。
いつものさとみなら、子供の具合が悪いと聞けば、行ってあげてと言ってくれると思ってた。
俺の前であんな風に泣きながら感情をぶつけてきたのは初めてだ。
『行かないで……』
そうさとみは言った。
俺にすがりついてまで……
これで良かったんだろうか?
さとみはずっと我慢していたに違いない。
それでも藤森との約束が終われば、自分に戻ってくると信じて気丈に振る舞っていた。
一番大事にしなきゃいけないのは、さとみだってことはわかっていたのに……