Fragile~思い出に変わるまで〜
俺はため息をつきながら、携帯で近くの救急病院を調べていくつか電話をしてみた。


ようやく受け入れてくれそうな病院を見つけてホッとする。


ここからそう遠くない総合病院が夜間診療で診てくれることになって、俺の車で連れていくことにした。


毛布にくるんだひなを抱えて部屋を出ようしたとき、あとから着いてきていた藤森が俺の服の裾を掴んだ。


「どうした?」


彼女を振り返ってそう聞いてみる。


「健……ありがと」


「いや、いいよ」


よっぽど心細かったんだろう。


頼りなげに礼を言う彼女を見ながら、俺は複雑な気持ちになった。


病院に着いて診察してもらうと、胃腸炎を伴った風邪との診断だった。


熱も高く吐いていたため、脱水症状を起こしかけていたらしい。


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