Fragile~思い出に変わるまで〜
行ってしまった。
ひなちゃんのところへ……
藤森さんのところへ……
健が彼女たちの元へ行ってしまったことは、私にとって今夜だけのことではなかった。
気持ちも藤森さんの方に行ってしまったんだと認めざるをえない。
初めて本音でぶつかったことに対して、健はあくまでも理解ある妻を私に求めた。
「あはっ……」
なぜか笑いが込み上げてきた。
可笑しくて声を押さえられないくらい笑うと、今度は涙が出てくる
完敗だ……
いい妻なんか演じるんじゃなかった。
最初から行かないでって言えば良かった。
あの親子と出掛けることを許したとき時点で、私はもうすでに負けていたのかもしれない。