Fragile~思い出に変わるまで〜
でも……


そうじゃないってことが今日、はっきりとわかった。


別れよう……


この子は一人で産もう。


健が藤森さんのところへ行ってしまった時点で、私の心は決まっていた。


あれは一種の賭けだったのだ。


ちゃんと気持ちを伝えた上で、どちらを選ぶのか……


そしてそれは私の負けってことで幕を閉じた。


だから、潔く別れるしかない。


もちろん健には子供のことを知らせないまま、別れるつもりだった。


こんな気持ちのまま、またいつ藤森さんからの電話で出掛けて行くかもしれない健を、待っていられるほど私は強くない。


いい妻のふりをするのはもう終わりだ。


そう思った瞬間、お腹がピクッと動いた。


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