Fragile~思い出に変わるまで〜
そっと……お腹に手を当ててみる。


私をなぐさめてくれてるの?


もう一度、今度はさっきよりも大きくはっきりと動くのがわかる。


そうだ、私は一人じゃない。


大好きな健との結晶がいるじゃない。


もっと強くならなきゃ。

こんなにメソメソしてばっかりじゃ、胎教にだって良くないに決まってる。


母親としても、女としても……


強く逞しくありたい。


藤森さんのように、泣いてすがって子供のことさえ自分ではままならないような母親には決してならない。


健との子供を一人で立派に育ててみせる。


いつか健と会わせたとき、感謝されるくらい立派に……


自分自身に固くそう誓って、私はお腹の赤ちゃんにいつまでも語りかけていた。
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