Fragile~思い出に変わるまで〜
そんなさとみに、俺は能天気にもさっきの出来事を受け入れてくれたんじゃないかと思い始めていた。


彼女の決心に何も気づかないまま、ただ責められないことにホッとして俺は安心していた。


食事が終わった頃、今まで黙っていたさとみがふと口を開いた。


「ちょっと話があるから……

リビングで座って待っててくれる?」


怒っている風でもなく、いつになく冷静な落ち着いた態度で俺にそう告げた。


表情が悲しそうに見えるのは、気のせいだろうか?


少しだけ動揺したけれど、それでもきちんと話し合った方がいいんだろうと観念して頷いた。


「わかった……」


そう言って、言われるままにリビングのソファーに座り、さとみが後片付けを終わらせるのをじっと待つ。


しばらくすると、洗い物を終えたさとみがお揃いのマグカップを持ってこちらにやってきた。


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