Fragile~思い出に変わるまで〜
二兎を追う者は一兎をも得ず……か。
なんかそんなことわざあったなぁ……
健は呆然としながら、リビングのソファーに座っていた。
さとみに別れを切り出されたとき、もう藤森には会わないからと必死に説得した。
でもさとみの決意は固くて、俺の意見なんか全然聞いてはくれなかった。
しかも間の悪いことに、何日かしてまた藤森から連絡があったのだ。
元気になったひなが俺に会いたがってると言われて、俺はそれを断れなかった。
それを期にさとみは実家に帰り、しばらくして離婚届けと結婚指輪が書留で送られてきた。
テーブルに置いた離婚届けにはさとみの筆跡と印が押されている。
俺は、何を間違えてしまったんだろう?