Fragile~思い出に変わるまで〜
そのときの私は、健ももう私のことはふっ切れて、藤森さんとひなちゃんと仲良く暮らしてるんだと思ってた。


健がそんなに器用じゃないってことを、わかってたはずなのに……


「あれ?

大沢課長の奥さんですよね?」


後ろからそう声をかけられて振り向いた。


そこには見覚えのある屈託のない笑顔が立っていた。


「桜井……くん?」


自信なさ気にそう言うと、彼は心底嬉しそうに答える。


「うわぁ!俺のこと覚えててくれたんですか!

すげー嬉しい!感激です!」


街中だというのに、かなりボリュームの大きな声でそう言いながら、両手で私の手を掴んでブンブン振り回す。


驚いてされるがままになって固まっていると、彼はハッとしたように両手を離して、それから少し不服そうに言った。


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