Fragile~思い出に変わるまで〜
病院に着いたと同時に、母が看護師さんを捕まえて今の状況を伝えてくれた。


車まで来てくれた看護師さんは、冷静にリトマス試験紙みたいな紙を持ち出して、私の濡れている太ももの辺りにそれをくっつける。


「確かに破水みたいですね?
大丈夫ですよ、このまま分娩室に行きましょうね」


優しく私にそう伝えると、すぐに車椅子を用意して乗せてくれた。


私はそのまま分娩室に連れていかれることになり、父と母にお礼を言うとまたあとでねと手を振った。


看護師さんに車椅子を押されて行こうとしたとき、後ろから名前を呼ばれて振り向いた。


「さとみ!」


ハァハァと息をあげながら、私を呼んだのは美咲だった。


美咲は私の様子を見ると青ざめた顔で近づいてくる。


「どう……したの?

車椅子なんかに乗って!」


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