Fragile~思い出に変わるまで〜
ようやく部屋の前までたどり着いて、短く息を吐き心を決めると、玄関を開けて中へと入る。


そしてわざと奥の部屋に向かって声をかけた。


「ただいま!」


少し声が固くなっているかもしれない。


こんなことでちゃんとあやの顔を見れるんだろうか?


「たけるぅ!おかえりぃ!」


思いがけず奥から飛び出してきたのはひなだった。


嬉しそうに抱きついてくるひなを受け止めて、ギュッと抱きしめる。


彼女の髪から香るミルクみたいな匂いを嗅ぐとホッとした。



「たける……くるしい……」


そう言われてハッとする。


思ったよりも強く抱き締めていたんだと気付いて慌てて体を離した。


「ごめんごめん!
ひな、一人で大丈夫だったか?」

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