Fragile~思い出に変わるまで〜
「部長、これ目を通して大丈夫でしたら確認印押してください」
桜井がわざと部長を強調しながら、俺をからかうように声をかけてくる。
ハハッと笑いながら、桜井の頭を資料で叩いて軽く睨んだ。
「お前ねぇ……
その呼び方、まだ気が早いだろ?」
呆れたようにそう言うと、桜井はおどけた様子で笑いながら言った。
「照れない照れない!
もう辞令出てるんですから
大沢部長?」
ニッと笑いながらまたそう呼ぶ桜井を見て、言うだけ無駄だったと諦める。
「あぁ、はいはい、ありがとう
桜井課長こそ、今後ともよろしく」
お返しとばかりにそう言うと、桜井は照れるどころか待ってましたとばかりに喜んだ。
「いやぁ、やっと気づいてくれましたか?
俺、ようやく課長なんですねぇ……」
腕を組み目を瞑ってウンウンと頷きながら、そう感慨深げに話す桜井に、思わず吹き出してしまう。