Fragile~思い出に変わるまで〜
「部長と一緒にしないでくださいよ

俺のは純粋な片想いだったんですから!」


まったく人の気も知らないで……とブツブツ言いながら、オフィスを出ていってしまう。


俺はなんで桜井が怒ってるのかわからずに、その後ろ姿をしばらくぼんやりと見送っていたけれど、そのうち諦めて仕事に戻った。


この何ヵ月間か、がむしゃらに仕事を頑張ったおかげで部長に昇格することができたことは、素直に嬉しかった。


あやと離婚して一人になっても、さとみに出ていかれた時のような状態にならないよう自分の中で決めて、仕事にもプライベートにも頑張った結果だと思ったからだ。


そうならないことが、さとみやあやへのせめてもの償いになるんじゃないかと思ったし、自分自身も誰かに寄りかかるのではなく、自立した人間にならなければ、さとみにも会いに行けないと思っていた。

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