Fragile~思い出に変わるまで〜
「何言ってんだよ?

お前だって課長になったんだからワリカンだよ!ワ・リ・カ・ン!」


大人気ないのはわかってるけど、こいつと話してるとどうも調子が狂う。


「えぇー!」


桜井は本気でガッカリした様子でそう叫びながら口を尖らせて恨みがましい目でこっちを見てる。


まるで子供みたいなその姿に、思わず笑いそうになるのを必死に堪えた。


本当は最初からこっちが出す予定だった。


誘ったのも俺からなんだし当たり前なんだけど、あからさまにおごりだと言われて意地悪したくなっただけだった。


「わかったよ、おごりでいいから」


仕方なくそう言うと、桜井はさっきの様子が嘘のように元気になり、またはしゃぎ始める。


「やった!
じゃ、行きますか?
どこにします?」


まったくこいつにはかなわないな……


そう心の中で思うと、自然と笑みがこぼれた。

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