Fragile~思い出に変わるまで〜
今まで出かけるときに誰か連れてきたことなんかなかった桜井くんが、誰を連れてくるのかちょっとだけ興味があった。


もしかして、彼女とかだったりして……


そんな妄想をしながら、一人でにやけてしまう。


桜井くんももうすぐ30歳になるんだし、彼女くらいいなきゃおかしいもんね?


自分に思いを寄せてくれていたことはどこかに置いといて、そんなことを思う。


後ろでは相変わらず二人が騒いでいた。


バックミラーでその様子を確認しながら、思わず笑みがこぼれる。


桜井くんにしても美咲にしても、健太にとってはもう家族みたいなものだ。


父親がいなくても寂しい思いをさせなくてすんだのは、二人のおかげだと思う。


だから、もし桜井くんにそういう人が出来たなら、ちゃんと私たちも祝福してあげなきゃ……


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