Fragile~思い出に変わるまで〜
「もしかして……さとみの……?」


「うん……そうなの
……私の子だよ?」


正直にそう伝えると、健は驚いたように右手で顔を覆うと、しばらく絶句していた。


「そっか……さとみ結婚してたんだな?」


ようやく絞り出したように吐いた言葉は、想像していたものとはまったく違っていた。


そのせいで、本当のことを話すタイミングを失ってしまう。


健はそんな私の様子を見て何か勘違いしたのか、ひきつった笑いを浮かべて言った。


「……良かったな?

俺との時は子供に恵まれなかったけど、今回は出来たみたいだし……

さとみが幸せそうで俺も嬉しいよ」


そう言われてますます言い出せなくなる。


彼が私から目を逸らしたから、私も思わず俯いてどうしたらいいのか考えた。

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