Fragile~思い出に変わるまで〜
「そうならそうと早く言えよ……

俺は昨日からお前と二人で花見するのを想像して、憂鬱でしょうがなかったんだぞ?」


「すいません!
や、先に言ったら部長……嫌がるかと思って」


「お前と二人のが嫌だったんだってことが、今わかった」


そう言って笑うと、桜井もホッとした様子で笑った。


そんなやりとりをしてしばらくすると、目的地が近づいてくる。


車越しにも桜が規則的に並んで咲いているのが見えた。


青空に映える薄桃色のソメイヨシノが美しい。


やっぱり来てよかったかな……と助手席の窓から桜を眺めながら、そう思った。


運転している桜井の顔をチラッと見ると、やはり景色を楽しんでいるように見える。


だけど、敢えて綺麗だなんて言葉を吐くことなく、俺たちは静かに桜を愛でていた。


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