Fragile~思い出に変わるまで〜
さとみや美咲が男の子の質問に何か答えているけれど、俺の耳には何も入ってこない。


ママってことはさとみの子なのか?


聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが入り交じって、複雑な気分になる。


男の子が納得したのか、また桜井と美咲の方へと戻っていく。


一人残されたさとみの元に引き寄せられるように、俺はいつの間にかフラフラと彼女に近づいていた。


正直、聞くのは怖い。


だけどちゃんと聞いておかなければ前に進めない。


だから……


「さとみ?さっきの……

あの健太って子……

さとみのこと……ママって呼んでなかった?」


動揺を隠せないまま、途切れ途切れにそう言うと、さとみはあっさり答える。


「うん、呼んでたね?」

聞きたかった答えが返ってこないことに苛立ちを感じながら、仕方なくこちらから核心をついた。

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