Fragile～思い出に変わるまで〜

「さとみさん……

旦那さんいないですよ？」


一言だけ呟くと、桜井はまた黙りこくる。


「えっ？」


予想外の答えに、俺は間抜けな声を出した。


「さとみさんが何も言わないなら、俺の口から詳しいことは言えないですけど、健太を一人で育ててるのは確かです」


いつになく真剣な表情で話す桜井を見ていると、それが本当のことなんだとわかる。


でもこれ以上のことは、さとみの許可なしには話さないだろうと思った。


「なんで……俺とさとみを……会わせようと思ったんだ？」


さとみの事情については話さないだろうことはわかったけれど、違うことならば答えてくれるかもしれない。


さっきとは違う口調で、俺は遠慮がちに聞いてみた。