Fragile~思い出に変わるまで〜
来てくれないんじゃないかという思いが、また頭をかすめた時、個室の障子がスッと開いた。


店員が顔をのぞかせたと思うと、後ろにいた女性を部屋へと招き入れる。


「お連れ様がお見えになりました」


そう俺に声をかけると、店員は障子を閉めてそのまま退出した。


その場に立ったまま、さとみは申し訳なさそうな顔をして俺を見ると、突然頭を下げた。


「遅れてごめんなさい!
電車に乗り遅れちゃって……」


謝るさとみを制して、とりあえず座るように促す。


「大丈夫、気にしないで座って?

来てくれただけでも嬉しいよ」


思わず声が詰まりそうになった。


さとみの顔を見れただけで泣きそうになる。


来てくれて良かった。


心底ホッとしながらさとみの顔を見ると、まだ謝り足りないような、申し訳なさそうなそんな顔をしている。


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