Fragile~思い出に変わるまで〜
「なんだか……初めてのデートみたいだね?」


そう言って頬を染めるさとみが愛しくて、俺は何も言えずにそっと視線を外した。


「健……?」


そんな俺を不思議に思ったんだろう、さとみが顔を覗きこんでくる。


トクン!


心臓の鼓動が早くなる。


まるで初めて恋したみたいに、さとみを前にしてドキドキしている自分に驚いた。


とりあえず何か言わなきゃと思い、言葉を探す。


「き、今日は子供はどうしてるの?」


動揺してるのがばれるんじゃないかと思いながら、なんとかそう聞いてみる。


「あぁ……えっと実は、うちで美咲と桜井くんが見てくれてるんだ」


少し言いづらそうに俺の様子を窺いながら、さとみはそう答えた。


たぶん、桜井が絡んでることを俺が嫌がると思ったのかもしれない。

< 545 / 589 >

この作品をシェア

pagetop