Fragile~思い出に変わるまで〜
「ふふふ、確かにねぇ?

たまに私、息子が二人いるんじゃないかと思うときあるもん」


笑いながらさとみがそう言うのを見て、俺は桜井の気持ちを知ってるだけに複雑な心境になった。


桜井……可哀想に……


そんなたわいのない話をしながら、次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。


豆腐と湯葉の専門店だけに、ヘルシーではあるけれど充分満足できる内容だ。


さとみは豆腐シュウマイが好きで、よくお土産にも買ってたっけと思い出す。


緩やかな時間が流れ、気がつくと食後のデザートも終わり、お茶が運ばれてきていた。


そろそろ本題に入らなければならない。


ようやく覚悟を決めて、背筋を伸ばし座り直すと、さとみの顔を真剣な眼差しで見つめた。


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