Fragile~思い出に変わるまで〜
「でも……」


いつまでもウジウジ悩みながらそう言うと、さとみは大きく溜め息をついてから、意を決したように顔を上げる。


「大丈夫だよ!

親子なんだから!」


いつも穏やかなさとみからは想像できないくらい勢いよく、彼女はそう言い切る。


なんでそんなに自信があるんだろう?


親子だって言ってくれるのはものすごく有難いけれど、一緒に住んだから、はい親子ですとは簡単にはいかないだろう?


俺が本気で悩んでいると、さっきまでの緊迫した空気が嘘のように、隣でさとみがプッと吹き出した。


えっ!?


ここ笑うとこじゃないだろう?


驚いてチラリと助手席を見ると、さとみはまだ体を震わせて笑ってる。


そして目尻の涙を拭いながら、再び口を開いた。


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