Fragile~思い出に変わるまで〜
「さとみ……ありがとう」


途中で路肩に停めた車には、夕陽が射してくる。


さとみの顔が照らされて、キラキラ輝いて見えた。


彼女が綺麗になった理由。


それはふっくらしただけじゃなく、母親になったからなんだとようやく気づく。


昔のオドオドとした彼女とは違う、穏やかな中にも一本芯の通った強さがあるからなんだと思った。


俺もさとみみたいに変われるだろうか?


父親という大役を任されたのだから、強く成長していきたいと思う。


だから、今はまだ泣かせて欲しい。


これからきっと強くなるから……


ハンドルに突っ伏して泣き続ける俺を、さとみは黙ったままいつまでも背中をさすってくれていた。

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