Fragile~思い出に変わるまで〜
しばらくするとさとみがハッと気づいて恥ずかしそうに背を向ける。


「ちょっと、何見てんの?

恥ずかしいじゃない」


照れる姿さえも愛しく感じる。


昔と完璧に逆転したな……と思う。


今では俺の方がさとみを好きで仕方がない。


ずっと彼女を俺の胸に閉じ込めておきたいほどに……


ふいに寝室の隅から泣き声が聞こえた。


ドレッサーからさとみが立ち上がろうとするのを制して、俺は泣き声のする方へ近づいていく。


そしてその泣き声の主をそっと抱き上げた。


軽く揺らしながらあやすと、ようやく泣き止んでにっこり笑う。


「花純美、いい子だね?」


俺がそう話しかけると、クスクス笑いながらさとみが冷やかすようにこちらを見る。


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