Fragile~思い出に変わるまで〜
「そう……なんだけどね……
こないだその話し合いをするのに二人で会ったんだけど……」


震える声でそう言うと、しばらく彼女は黙ってしまった。


まさか何か……されたんだろうか……?


心配になり声をかけてみる。


「話し合い、うまくいかなかったの?」


なるべく優しくそう聞いてみたが、なかなか返事がない。


俯く彼女の頭をそっと撫でると、ビクッと体が揺れた。


「ごめん……なさい」


消え入りそうな声で言いながら、顔を上げた彼女の目からは、大粒の涙がこぼれていた。


鼻をすすりながら、涙を拭くと、気を取り直したようににっこりと笑う。


「健がさ。あんまり優しいもんだから、ちょっと気が緩んじゃったよ」


気丈に言う藤森を、俺は痛々しくて見てられなかった。


< 76 / 589 >

この作品をシェア

pagetop