Fragile~思い出に変わるまで〜
「……わかったよ」


一言だけそう言うと、藤森は安心したように、さらに抱きついてくる。


娘の存在まで出されたら断れない。


例えば、俺が断って何かあったりしたら……


そう考えると断ることが出来なかった。


「ごめん……健……

今だけ……少しでいいからこのまま抱きしめて……?」


藤森がそう言ったのは、今の状況が俺が抱きつかれている形になっているからだろう。


俺が藤森を抱きしめてほしいと、言っているのだ。


だらんと下がったままの腕を藤森の背中にそっと回す。


、一瞬、さとみの顔が頭に浮かんだ。


だけど……


元旦那にひどい目にあわされて傷ついている藤森を放っておけなくて……


俺はそのまま彼女の体をきつく……


抱きしめた。
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