Fragile~思い出に変わるまで〜
リビングにいい香りがたちこめたところで、タイミングよく健が起きてきた。


ダイニングテーブルにカフェオレを運びながら、先程練習したばかりの笑顔で明るく声をかけた。


「おはよう」


パジャマ姿で頭をかきながら、いつもの自分の席につく。


「おはよ」


元気のない返事に少しだけ不安になったけど、たぶん寝不足のせいだろうと納得して、トーストにバターを塗って健の前に置いた。


「昨日は遅かったんだね?
トラブルは大丈夫だったの?」


冷静に明るく何気ないふりをしてそう聞いてみる。


健はあきらかに動揺しながら、それを隠すような返事をした。


「あ……うん

そうなんだよ、ちょっといろいろあって……

説明したいんだけど、朝だとバタバタして時間もないから、今日帰ったら話すわ

心配してくれてたのに悪いな」

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